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仕組みと体制で問題解決を進める、尼崎市の“子育て支援”の取り組みに迫る(兵庫県)

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高い交通利便性を誇り、快適な住環境においても年々と注目度を高めている尼崎市。早くから縦割り行政を見直し、風通しの良い縦横の連携で市民に対するサービスを向上させてきた実績を持つ同市では、近年は特に『子育て支援』に力を入れています。

その背景を探るべく、尼崎市のこども青少年課の金子亜矢さん、保育企画課の宮野晋吾さん、保育運営課の三木陽子さん、いくしあ推進課の吉岡健彦さん、安達裕美さん、清野紫さん、ユース交流センターの片岡一樹さんにお集まりいただき、それぞれが関わる事業から、尼崎市の子育て支援を中心とした政策の特徴や具体例などについて、お話を聞きました。

インタビューにお答えいただいた尼崎市の皆さん

子どもたちの健やかな成長を、社会全体で育む

――まずは尼崎市で制定された『子どもの育ち支援条例』について教えてください。

こども青少年課 金子さん: 尼崎市では、子どもの健やかな育ちが全ての市民の幸せな暮らしへつながると考えており、2009(平成21)年12月に『子どもの育ち支援条例』を制定しました。これは国際連合が定めた児童の権利に関する条約に基づいて尼崎市で作成したものです。

主なポイントは『子どもたち一人ひとりが大切にされて、たくさんの人に支えられて育つ』ということです。子どもの人権が大切にされ、保護者、地域住民、尼崎市、子どもの施設、事業者といった全ての大人たちがみんなで子どもを守り支えていくことが大切であると。

またそれと同時に、子ども自身も他の人を大切にして思いやりの気持ちを持つなど、自分たちに出来ることも考えて実践していこう、といったことも含まれています。具体的には、市内の小学4年生の子どもたちを対象に関連するパンフレットの配布を行い、周知・啓発に努めています。

こども青少年課 係長 金子亜矢さん

――続いて、尼崎市の「こどもコミュニティソーシャルワーカー」の取り組みについても伺えますか?

金子さん:「こどもコミュニティソーシャルワーカー(CSW)」とは、高齢者・障害者・子育て中の親など、地域で困っている人々の 支援に取り組んでいる方やこれから取り組もうとしている方々が活動しやすいよう情報提供や交流の場を設ける支援を行っています。

尼崎市では、「こどもコミュニティソーシャルワーカー」として、子ども・子育て支援に特化したCSWを設けていることが特徴です。そして市や各専門職のスタッフと密に連携を取り、具体的に問題を解決したり提案を行える体制になっていることが、尼崎市の良いところであると感じています。

保育の量・質ともに高めるため、利用者・支援者双方の支援に取り組む

――続いて、保育環境についてお伺いできますでしょうか。

保育企画課 宮野さん: 尼崎市においては、保育施設の利用を希望される方が近年大幅に増えている状況にございます。具体的には、2015(平成27)年度から開始された『子ども・子育て支援新制度』以降、約6年間で2,000人以上、利用希望者が増えております。

お子さんを保育施設に預けて就労するという生活スタイルが増えていることや、2019(令和元)年10月から開始した主に3~5歳児を対象とする幼児教育・保育の無償化制度など様々な社会の変化から、保育施設の利用希望者が増えているものと考えております。

保育企画課 係長 宮野晋吾さん

――待機児童対策などについてはいかがでしょう?

宮野さん:尼崎市では「保育園の新設」と「保育士への支援」という2つを柱に対策を行っています。2015(平成27)年度に97ヶ所であった保育施設数を順調に伸ばし、2022(令和4)年4月には147ヶ所になります。

保育施設の申込相談窓口には、保育経験や知識が豊富なコンシェルジュ(専門相談員)がおり、利用申込者の相談支援に取り組んでおります。また利用調整にAIを活用することで、より多くの方が保育施設を利用できるように支援しております。

また、最も大切なことは、現場で働く保育士さんへの支援であると考えております。尼崎市では、家賃や奨学金返済の補助、就職一時金といった補助を実施しておりますが、引き続き、今後も保育士さんへの様々な支援を実施していきたいと思っております。

保育運営課 係長 三木陽子さん

――新しく設立された「保育士・保育所支援センター」についても教えてください。

保育運営課 三木さん: 「保育士・保育所支援センター」は2021(令和3)年7月にプレオープンをして、10月からは専用サイトも公開し本格的に稼働しています。一番の目的は保育士不足を補うことで、専用サイトから相談の予約や求人検索などが可能となっています。

他市で働いていた方が本市へ来られたケース、出産や子育てで離れていた保育士さんが再び就職するケースなど、様々な環境の方に向けてより良いマッチング支援を行っています。具体的には就労時間や場所といった条件を丁寧にお聞きして、保育施設の見学や面接の日程調整なども行い、既に52人の方が相談に訪れ12人の方が就職に結びついています。

また今年度は11月以降「キューズモールあまがさき」で、月に1度のペースで土日どちらかに出張相談会を行っており、センターを広く知っていただいたり、平日に相談に訪れにくい方に対応できるようにしたりしています。

※保育士・保育所支援センター 専用サイトはこちら▶: URL:https://www.ama-hoikushishien.jp/

専門領域をこえた問題解決ができる、総合支援拠点「いくしあ(子どもの育ち支援センター)」

「いくしあ(子どもの育ち支援センター)」外観

――尼崎市独自の子育て支援拠点である「いくしあ(子どもの育ち支援センター)」の概要を教えてください。

いくしあ推進課 清野さん:「いくしあ」は、児童虐待や不登校、発達障害といった課題や困難を抱えるお子さんや、子育て家庭に寄り添いサポートしていくことを目的に福祉、保健、教育の関連が連携して切れ目のない総合支援を目指して、2019(令和元)年の10月1日にオープンしました。

活動指針として大きく3つの軸を持ち、「1.『子どもファースト』を理念に0歳からおよそ18歳の子どもを対象に」「2.縦の連携を大切に、年齢に応じた切れ目がなく継続的に」「3.横の連携を重視した福祉、保健、教育などが連携し総合的に」子どもを支援できる体勢を整えています。

いくしあ推進課 清野紫さん

――垣根を作らず実行力を備えた体制を組まれているのですね?

いくしあ推進課 吉岡さん: はい、この「いくしあ」もそれに当てはまると思います。2016(平成28)年に児童福祉法の一部改正で子ども家庭総合支援拠点の整備を求められることとなり、尼崎市としては「いくしあ」をその役割を担う施設として設立しました。部署や専門領域をこえて一堂に集うという物理的なつながりも、より迅速で適切な対応に寄与していると感じます。

「いくしあ(子どもの育ち支援センター)」内のスペース

わかりやすく表現すると、入口がひとつになっていて、もちろん各部署に寄せられる情報もありますが、いずれの情報も一様に共有して必要な部署が連携しながら動くことにより、より問題を適切に解決できるような仕組みになっています。

いくしあ推進課 課長補佐 吉岡健彦さん

――その窓口が総合相談という入口で始まるわけですね?

いくしあ推進課 安達さん: まずはお困りごとを整理して正確に把握することに始まります。これは保護者さんだけでなく、子どもたちからの相談も入ります。緊急性の高い事案もあれば、例えば「どうすればお兄ちゃんにトランプで勝てるか?」というような相談が入ることもありますが、どのような場合でも、まずはじっくりお話を聞いて問題を整理した上で必要な部署と連携して解決に努めます。

「いくしあ(子どもの育ち支援センター)」内のスペース

2020(令和2)年度で約4,700件の相談対応を行い、また来館者ものべ1万人を超えました。私たちは現状に満足するのではなく、今後はより早期の発見や対応で未然に問題を防いだり、より効果の高い支援を目指していくことが大切であると考えています。

いくしあ推進課 係長 安達裕美さん

若年層の“居場所”としてにぎわう「尼崎市立ユース交流センター」

――小さな子どもだけでなく、青年期の支援拠点もあるそうですね。「尼崎市立ユース交流センター」について教えてください。

ユース交流センター 片岡さん: 「尼崎市立ユース交流センター」は2019(令和元)年10月にオープンした施設です。センターが利用対象としているのは、尼崎市在住もしくは尼崎市の学校や職場に通う14歳から29歳の若年層となっています。

「尼崎市立ユース交流センター」外観

施設は、無料WIFI、充電スペース、PC・タブレットの貸し出し、音楽スタジオなどが利用できるフリースペースや、ダンスの練習などができる防音設備のついたホール、学習室、図書コーナー、ミーティングなどに利用できる支援活動室から構成されています。これまで2年間で5万人の利用者があり、音楽スタジオやレンタルホールを含めるとのべ10万人を超える利用がありました。

各利用者の使い方は自由ですが、『居場所』という位置づけもあり、私たちスタッフ(ユースワーカー)は利用者との関係性を重んじていて、声をかけてフラットなコミュニケーションの中から情報を得るようにしています。

「尼崎市立ユース交流センター」施設内・フリースペース

――施設を設けただけでなく、利用者との交流にも積極的なのですね。

片岡さん: 私たちの仕事は若者と大人をつなぐことだと考えています。若者の声を聞くと不満や要望が多くあり「じゃあ、それを実現するにはどうしたらよいか?」と一緒に考えるようなイメージです。

最近だと「尼崎市にスケボーをできる場所を作ろう」と、ASK(Amagasaki Skateboard Kindness)というストリートカルチャーのイメージ改善や拠点づくりを目指すプロジェクトが立ち上がりました。まだ未確定の要素も多いですが、候補地を絞り込む段階まで進んでいます。

ユース交流センター センター長 片岡一樹さん

これ以外にも「トランスジェンダーが生きやすい社会」や「児童虐待防止」など多岐に渡るテーマで活動を行っています。8月には尼崎市長や教育長を迎えて発表の場が設けられました。今後も活動の場を広げ認知度を高めて、若者が声を出して、より良い環境作りや社会参加をしていけるようサポートをしていきたいと考えています。

尼崎市のみなさん

こども青少年課 金子亜矢様、保育企画課 宮野晋吾様、保育運営課 係長 三木陽子様、いくしあ推進課 課長 吉岡健彦様、いくしあ推進課 係長 安達裕美様、いくしあ推進課 清野紫様、ユース交流センター センター長 片岡一樹様

・こども青少年課 金子亜矢さん
・保育企画課 宮野晋吾さん
・保育運営課 三木陽子さん
・いくしあ推進課 吉岡健彦さん、安達裕美さん、清野紫さん
・ユース交流センターの 片岡一樹さん

「尼崎市役所(本庁)」
所在地:兵庫県尼崎市東七松町1-23-1
電話番号:06-6375-5639(昼間)
URL:https://www.city.amagasaki.hyogo.jp/

「あまがさき・ひと咲きプラザ」尼崎市立ユース交流センター・アマブラリ・いくしあ
所在地:兵庫県尼崎市若王寺2-18
※この情報は2021(令和3)年12月時点のものです。

仕組みと体制で問題解決を進める、尼崎市の“子育て支援”の取り組みに迫る(兵庫県)
所在地:兵庫県尼崎市東七松町1-23-1 
電話番号:06-6375-5639
http://www.city.amagasaki.hyogo.jp/map/1..

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