住んでみてよかった!と感動される街を目指して。
多くの希望を乗せた「みそのウイングシティ」開発計画
埼玉高速鉄道線(SR)の始発・終着駅として知られている「浦和美園」駅。その周辺で開発が進められている、320ヘクタールの壮大なまちづくり事業が、「みそのウイングシティ」計画である。駅が開業した2001(平成13)年から本格化し、当初は造成などの「骨組み作り」の工事が中心だったが、ここ数年で急速に宅地化が進みつつある。
今回はこの開発の事業主である「さいたま市 まちづくり推進部 浦和東部まちづくり事業所」 の古市正典さんと、「UR都市機構 首都圏ニュータウン本部 埼玉中央業務事務所」の大谷英基さんのおふたりに、「みそのウイングシティ」のテーマや魅力、現在の進捗状況などについて話を伺った。
「みそのウイングシティ」とはどのようなまちづくりで、どういった経緯で開発されてきたのでしょうか。
古市:もともとの開発計画としては、埼玉高速鉄道線(SR)が南北線からの延伸という形で建設されることが1985(昭和60)年に決まり、その後、埼玉高速鉄道線については、当時の営団ではなく埼玉県が中心となって、沿線自治体や市中銀行との第3セクター方式で運営することが決まり、「埼玉高速鉄道株式会社」が設立されました。そしてその会社が中心となって建設を進め、2001(平成13)年の3月に「浦和美園」駅が開業しました。
新しい駅ができることに合わせて、その周囲の新しい街づくりも並行して進められることになりました。当時の埼玉県、旧浦和市、旧岩槻市といった行政から、住宅・都市整備公団(現在のUR都市機構)に開発要請を行い、現在も一緒になって事業を進めています。SRの開業に合わせてスタートしたまちづくりです。
また、現在この街のシンボルにもなっている「埼玉スタジアム2002」も、当時既に新しい県営のサッカースタジアムとしてあの場所に建設が決まっていたので、この鉄道駅とサッカースタジアムという「2つの核」を中心に据えてまちづくりを開始することになりました。
どのような広さで開発がなされているのでしょうか。
古市:「みそのウイングシティ」の開発では、さいたま市とUR都市機構が担当している地区は全部で4地区(浦和東部第一、浦和東部第二、岩槻南部新和西、大門下野田)施行をしておりますが、合計約300ヘクタールという開発規模になります。この規模は、埼玉県内でもかなり大きいものになります。駅から徒歩圏内、だいたい半径1~1.5キロメートルのエリアの範囲の整備となります。
通常、区画整理を行う時には、地元の自治体が事業を進めていくのですが 、ここに関しては地区が大きすぎるため、自治体だけでは時間もコストもかかりすぎてしまう面があります。そのため、県と地元自治体からUR都市機構に開発要請をし、現在に至っています。
開発地区は地区ごとにUR都市機構とさいたま市に担当が分かれています。さいたま市が担当しているのは、駅西側の「浦和東部第一地区」と隣接する「大門下野田地区」の2地区です。それ以外の地区をUR都市機構が開発しています。面積としては、UR都市機構の開発部分が大部分ですね。 埼玉スタジアムについては県が整備を、今回の区画整理の地区に入っていませんが、その周りを包含する形で整備をしています。
現在はどのような開発段階なのでしょうか。
古市:主要施設としては、まず2001(平成13)年に「浦和美園」駅が開業し、その後区画整理事業に着手したわけですが、「東口駅前広場」など主要な施設ができた段階で2006(平成18)年の4月に「街びらき」の式典を行いました。駅前のマンションなどの入居が始まりました。
大型施設についても言いますと、「埼玉スタジアム2002」が駅開業と同じ2001(平成13)年に完成し、その翌年の2002年にはサッカーのワールドカップの会場となりました。そして、「街びらき」と同じ年・2006(平成18) 年の4月下旬には「イオンモール浦和美園」がオープンしました。
開発が進んでいますが、工事はいつ完了予定なのでしょう?
古市:UR都市機構の事業については、平成28年度末(2017年3月)までには工事が完成するという目標で進めていますので、事業全体としてはもう後半戦に入っているという段階です。 さいたま市が施行する第一地区部分については、まだ中盤戦という感じです。
また、UR都市機構の担当する地区につきましては、「東川口」駅に近い、南側のほうから順番に事業を展開してきておりますので、南側(「イオンモール浦和美園」周辺)についてはほぼ形としてできあがっており、現在は北側の地域を鋭意進めているという段階です。
宅地はほぼ完成ということになりますし、公園などについても、UR都市機構担当地区の街区公園については、工事の進行に合わせて整備を進めます。近隣公園については、さいたま市が整備することになっておりまして、今、実施設計を行っておりますので、来年(2015年)からの工事着手となるかと思います。
そもそもなぜ、浦和美園が開発地域に選ばれたのでしょうか?
古市:もともとこの地域は交通の要衝という特徴があります。東北自動車道が 1980(昭和55)年に開通して「浦和IC(インターチェンジ)」もできましたし、さいたま市としても、市の総合振興計画の中で2つの都心と4つの副都心という地区を位置づけており、浦和美園は副都心のひとつに位置づけられております。それだけ交通の利便性が良いということです。
そういった便利な場所に暮らしやすい新しい街を作りながら、都心機能を補完する副都心としても整備を進めていこうということです。
「浦和IC」については、もともと料金所がここにできた当時には、東北方面側の出入口しかないハーフインターとして造られたため、改善を求める声も長らくあり、2002年のワールドカップ開催に合わせて東京方面に新しい出入口が造られました。ただ、現在「浦和インターを出た車が浦和市街地方面に直接乗り入れできない」という課題があり、こちらを改善・解消するため、今は浦和料金所直下の鶴巻でランプの工事をしており、2018(平成30)年ごろの完成を予定していますので、将来的にはより便利で使いやすいインターチェンジになると思います。
スタジアムを核にした「スポーツ・文化の交流拠点」、駅を核にした「地域交流拠点」など、交流が開発のキーワードになっていますが、具体的にどのような仕掛けがあるのでしょうか?
古市:「埼玉スタジアム2002」周辺の地域については、スポーツ関連や健康関連の機能の集積を図って、スタジアムと有機的なつながりを持てるような街づくりを進めていきたいと考えております。
また、スタジアム自体は全国レベルの大会や、国際試合なども行われるところですので、国際的なスポーツの交流を図りたいというイメージも持っています。
「浦和美園」駅の周辺に関しては、地域生活拠点としての位置づけがあります。現在は、2016(平成28)年の1月に開所予定でさいたま市の複合公共施設の建築を進めています。この中には市民の方に向けたサービスを行う支所機能のほか、図書館、コミュニティセンター、教育相談室、防災備蓄倉庫などができ、地域の交流拠点となるような場所を目指しています。現在は仮称で「浦和美園駅東口駅前複合公共施設」という長い名前が付けられていますが、いずれ市民公募などで魅力的な名前が付けられるかと思います。
市としてはこういった複合施設を中心に、地域に密着型の生活支援施設なども併せて活用しながら、交流人口を増やしていきたいと考えております。
「自然とのつながり」が開発のキーワードのひとつになっていますが、具体的にはどんな「つながり」があるのでしょうか?
古市:この地域は、中心部に一級河川の「綾瀬川」が流れており、開発以前には川を中心に水田なども多くありました。また、「浦和東部第一地区」や「大門下野田地区」など段丘上の台地部分では植木産業が盛んで、いずれにしても農地が中心の自然豊かで落ち着いた場所でした。
今回に開発においても、安全にお住まいいただけるように、綾瀬川の治水のための調節地をかなり大きな面積でとっており、活用の詳細については検討中の部分ではありますが、そのひとつは“水に親しめる空間“になるかと思います。また、来年から着工予定の「近隣公園」についても、安全性との兼ね合いも考慮しながら河川との一体的な整備ということをポイントに水辺などの整備を考えております。
このほかですと、スタジアムの近くに斜面林(河岸段丘の段丘崖)があり、こういった従前の自然はできるだけ保全するようにしています。残せるものは残しつつ、新しく造る部分については、街と自然との調和を大事にして開発を進めております。
大谷:もうひとつ、駅前の道路については幅員を40メートルと非常に広く取っており、この街の大きな特徴のひとつになっています。歩道も両側それぞれ10メートル幅を確保し、その歩道には植栽もありまして、四季折々の自然を楽しみながら安全な歩いていただけるという点は、街の大きな魅力につながっているかと思います。駅の西側についても東側についても、同様に広い歩道となっています。
古市:広い道幅を確保しているというのには、実はもうひとつ理由がありまして 、万一災害が起きた時、幅員の大きな道路がありますと延焼が遮断できますし、主要な道路については電線の地中化も行っておりますので、災害復旧時にも緊急車両が通りやすく、電柱や電線が復旧作業の妨げになることもありません。そういった部分では、災害にも強い街でもあるかと思います。
防災に関しては特に関心が高い部分かと思いますが、その他にも何か対策などはなされているのでしょうか?
古市:広い道幅や電線地中化に加えて、駅周辺については「防火地域」にしておりますし、その他の地域についても「準防火地域」ということになっていますので、建物を建てる時にも、防火基準に適合した建物でなければ建てることができません。そのため、万一大規模火災等が起きた時にも、燃えにくい環境ができていると思います。
災害時の避難場所や備蓄という部分でも、十分な対策がなされています。スタジアムは当然避難場所にもなりますし、雨水を飲用水にできる貯水槽もあります。スタンドの下には食料や毛布などを収めた防災備蓄庫もあります。また、駅前に建設中の複合公共施設についても、防災倉庫としての機能を組み込んでいく予定ですので、合わせて高い防災機能を発揮できるかと思います。
今後新たにできる施設や店舗には、どのようなものがありますでしょうか?
古市:大型のものですと、前述の複合公共施設の工事が進んでいます。
大谷:店舗だと、2013(平成25)年に「カインズホーム 浦和美園店」が開業し、街の中心部付近に「(仮称)ヤマダ電機テックランド 浦和美園店」も、現在工事を進められています。地権者の方の土地でもさまざまな土地活用が考えられているとお聞きしていますので、今後も続々と店舗の出店が決定してくるかと思います。
古市:教育施設についても、現在既に「さいたま市立美園小学校」が2012(平成24)年に開校しておりますが、新たな中学校と、もうひとつ小学校の用地を確保しています。駅前地域の人口もだんだん増えてきておりますので、新しい学校の立地は大いに期待されているところです。
「みそのウイングシティ」の住民ならではのメリット、住民だけが享受できるサービスなどはあるのでしょうか?
古市:全世帯に関わる部分ですと、地域の生活の利便施設、生活支援サービスなどについて積極的に導入していこうと考えております。これは(仮称)UDCM(アーバンデザインセンターみその)という施設を中心に進める予定です。来年度から運営会社の設立を進めまして、たとえば子育て支援サービス、 セキュリティ会社と連携した見守りサービス、宅配などを行う買い物支援サービスなど、浦和美園にお住まいになった方でないと享受できないサービスを、この地域のニーズを汲みながら考えていく予定です。現在はまだ基本構想の段階ですが、これから具体化が進んでいくかと思います。
さいたま市が開発する浦和東部第一地区の一部では現在、「スマートホームコミュニティ」という計画を進めておりまして、これは太陽光発 電システム、コージェネレーションシステム、蓄電池などを活用する「スマートホーム」が立ち並ぶ街区を整備して、多様な生活パターンの世帯の間でエネルギー利用の最適化を図る「スマートホーム・コ ミュニティ」というシステムを整備するという計画なのですが、これによってエネルギー的にも、災害に強い街づくりを推進しています。
最後に、古市さん・大谷さんが思う浦和美園エリアの魅力について教えてください。
大谷:まず、都心方面に電車で仕事に通う方々にとっては、すべての電車が始発で、駅から座って通勤できるというのは非常に便利なことかと思います。今後SRの延伸があったとして も、車両基地がここにあるので、始発電車は多いのではないかと思います。それから広い歩道です。子どもたちが学校に行く時にも安全に通うこともできますし、買い物に行く時にも、広い歩道と車道が整備されていることは、安全性にも利便性にもつながると思います。
スタジアム周辺についても、緑豊かな公園が整備されていますので、休日は散策をしたり、芝生の広場で遊んだりということもできまして、特にファミリーの方にとっては、とても暮らしやすい街になっていくかと思います。
古市:さいたま市としては「みそのウイングシティ」はこの辺りで一番新しい街ですので、お住まいになる方に“住んでみてよかった!“と感動していただけるようなまちづくりをしたいと思っています。ここは新しい街ではありますが、交通利便性が高く、生活利便性も高い副都心としてのポテンシャルを持っている場所ですので、そういった利便性を実際に住んで体験していただいて、「浦和美園に住んで本当によかった」と言っていただければ、これほど嬉しいことはありません。
今回、話を聞いた人
【写真右】
さいたま市都市局 まちづくり推進部 浦和東部まちづくり事業所
所長補佐兼管理係長・古市正典さん
所在地:さいたま市緑区大門1678番地1
http://www.city.saitama.jp/006/015/049/002/index.html
【写真左】
UR都市機構 首都圏ニュータウン本部 埼玉中央業務事務所
事業課課長・大谷英基さん
所在地:さいたま市緑区大字南部領辻4124番地
http://www.ur-net.go.jp/ur-stage/html/area/wing/
※この情報は2014(平成26)年12月時点のものです。
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